「虫と共存する庭づくり」虫や病気との付き合い方
*「虫と共存する庭づくり」について英国の園芸書から読み取った内容をお伝えしますが、殺虫剤を使う前にまずは健康に育てることを意識してほしいと個人的には思います。
一番下に掲載している庭と暮らし8月号の内容も一緒に読んでもらえるとうれしいです。
近藤かおり
「フローラルガーデンの庭仕事」H28年7月15日の内容です。次回は8月19日「庭植えハーブ」代表的なハーブの育て方。
■ フローラルガーデンの庭仕事講座/毎月第3金曜日(4月のみ第4) 10:00〜11:30
イギリスのガーデン本を読み解きながら庭目線の園芸基礎知識を学ぶ勉強会。
園芸と庭づくりの基礎を学ぶとともにフローラルガーデンの植物について説明します。
〈講師〉 ケイズガーデン 近藤かおり(フローラルガーデンよさみチーフガーデナー)
〈定員〉70名 〈参加費〉 無料
*お申込みはフローラルガーデン事務局0566-29-4330またはinfo@garden-yosami.jpまで
「虫と共存する庭づくり」虫や病気との付き合い方
preventing the occurrence of the problem 〜 問題の発生を予防するには? 〜
植物の健康に関する心配事はいつもあります。しかし、良い環境の庭では虫や病気に攻撃されることは希です。植物が健康に育つのに必要なもの、必要ないものは何かを知ることで避けられる心配事もあります。
by Alan Titchmarsh
1、自然を理解すること
植物は自生地では健康で良い状態に育ちますが、庭では自生地に近い土壌コンディションを整え、水分量、肥料分を調整することで植物が健康な状態になるようにする必要があります。
基本的に自生地と極端に異なる環境下では、植物が弱り、虫や病気に対して抵抗力がなくなります。例えば、自生地が乾燥地帯で水分をあまり必要としていない植物が、毎日水を与えられたり、水はけの悪い土壌に植えられたりした場合、虫や病気の問題が発生しやすくなります。
2、植物を守る10の方法
① 植物を健康に保つ(Healthy plants)
植物が健康であればダメージを受けた時の回復が早くなります。特に水を正しくコントロールすることは植物を健康に保つ近道です。
② 抵抗力のある品種を選ぶ(Resistant varieties)
花の色や実の大きさなど植物を選択する要素は数多くありますが、耐病性、耐暑性、耐寒性を考えて選ぶことで、花や実を失うリスクを抑えることが出来ます。ブリーダーが環境適応能力の高い植物を選抜し、生み出した、庭植えに適した植物を選ぶこともおすすめです。
③ かしこい文化的な方法(Cunning culturel methods)
理にかなった方法で虫や病気を寄せないようにします。例えば、ナメクジは湿気が多い場所を好むので風通しを良くしたり、乾きやすい環境にしたりすることで減らすことができます。耐寒性のある植物は、秋に種を蒔き、冬越しをさせると病気や虫に強い個体になります。
④ 障害物を置く(Barriers)
コッパーリング(銅の輪)はナメクジをよけるのに効果的です。
泡立てた石鹸を木の幹にぬると虫を動きまわれなくするのに役立ちます。また、石鹸は虫を窒息させたり、匂いで虫を寄せ付けなくしたりすることも出来ます。
⑤ 見つからないようにする(Hide and seek)
虫は匂いで食べ物を見つけます。鳥は色や形で好みの食べ物を見つけます。植物を1種類で育てるのではなく、ミックスして植えると匂いや形を隠すことが出来ます。例えば玉ねぎとニンジンを一緒に植えたり、キッチンガーデンの周りをラベンダーで囲ったりすることで虫や鳥の被害から守ることが出来ます。
⑦ 補食動物を使う(Encourage natural predators)
自然界ではすべての生き物に敵がいます。植物を食べる虫を食べる動物を呼び込むことで虫の害を減らすことが出来ます。
例)鳥が住む巣箱を置く。てんとう虫やクサカゲロウが住むインセクトホテルを置く。
⑧ コンパニオンプランツ(Companion plants)
コンパニオンプランツとは相性の良い植物のこと。一緒に育てることで片方が虫を引き寄せたり、寄せ付けないようにしたりして虫の害を減らします。また、栄養豊富な土づくりに役立つ植物を一緒に育てることで天然の肥料を得られます。
ネギやニンニクの仲間はバラやフルーツと相性が良く、細菌による感染症に強くなります。また、バラと一緒にラベンダーを植えるとアブラムシが少なくなります。
マメ科の植物は窒素、コンフリーはカリウム、ソーンアップル(ダチュラの仲間の雑草)はリンを集め、植物を健康に育てることに役立ちます。
⑨ 生物学的にコントロールするものを購入すること(Buying in biological controls)
自然界に存在する虫や細菌、病原菌を使った効果的な生物農薬は商業的に販売されています。それらは決して安いものではありませんが、生物学的に正しい方法でコントロールすることは転ばぬ先の杖になります。
⑩ 直接とる(Direct action)
シンプルに虫を自分の手で取ります。取った虫は高塩分の水や熱湯に入れるか、凍らせると確実に殺すことが出来ます。発見したらすぐ行動を起こすことが大切です。手で取ることが難しい虫(アリ、温室コナジラミ等)はハンドクリーナーで吸い取って集めます。集めた虫は袋に詰めて殺すか、遠くに捨てましょう。
3、殺虫剤の種類
①天然由来成分の殺虫剤・・・自然界に存在するもののみで作られた殺虫剤。
接触によって殺虫する接触性のものが多い。植物が吸収することで効果が現れ、1ヶ月以上効果が続くものもある。
②化学成分の殺虫剤・・・人工的に化学物質を抽出または合成して作られた殺虫剤。
即効性があるが、益虫を死滅させたり、化学物質が残留したりすることで自然界のバランスを崩す恐れがある。
③天然由来成分と化学成分が混ざった殺虫剤
天然由来成分の殺虫剤
問題および治療法 |
【虫害 、細菌やバクテリアによる感染症】 |
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・ボルドーミックス(硫酸銅と殺菌剤として使われる消石灰を混ぜた予防スプレー。分解しにくく毒性がある) |
【うどんこ病 、黒点病】 |
・炭酸水素カリウム(接触性殺虫剤。時々石鹸や油を固める材料として入っている) |
【細菌による感染症、昆虫】 |
・硫黄(粉または脂肪酸入りスプレーの接触性殺虫剤。いくつかの植物にはダメージがあるので小さな場所で試すことが必要 ) |
・液体石鹸または石鹸殺虫剤(アルコールの入った脂肪酸カリウム。接触性殺虫剤スプレー。水中生物に毒。監視下において安全 ) |
・ごま油/ブレンド魚油(通常スプレーを使用する。昆虫用の毒より早く効く。水質を安全に保つ。予防効果がある) |
【昆虫】 |
・グリースか接着剤のバンド( 冬に動くガに。通常アブラナ油から作られる) |
・フェロモントラップ(ガに) |
・植物性オイル(菜種油をベースにした接触性スプレー殺虫剤。おそらく、てんとう虫やミツバチには無害) |
・除虫菊粉(除虫菊の抽出物による接触性殺虫剤。水生生物に有害。ミツバチも殺す) |
・ベタベタトラップ(温室の中に吊るして飛んでいる虫に仕掛ける) |
・冬の樹木洗い(植物性オイルスプレーで冬越ししている昆虫の卵を窒息させる) |
【ナメクジ】 |
・リン酸第2鉄ペレット(子どもやペット、野生動物に無害) |
〈参考文献〉
SIMPLE, GREEN PEST AND DISEASE CONTROL / Bob Flowerdew
Alan Titchmarsh how to garden Pests and Problems / Alan Titchmarsh
庭と暮らし8月「ガーデナーの庭仕事/虫と共存する庭づくり」より
ひと雨ごとに植物がぐんぐん育つ梅雨時期。同時に虫や病気もやってきます。涼しい気候が好きな植物は高温多湿が苦手。うどんこ病で葉が真っ白になっているのはたいていそんな植物です。虫が葉を食べに来るのはバラ科の植物。 丸坊主にしたくなるほどおいしいのかな? やわらかい新芽はアブラムシの大好物。梅雨時期には様々な生き物が活発に動き回ります。
庭の中では植物も虫も微生物も一生懸命生きています 。 病気になっても虫に食べられても、植物は再び新しい芽を出し、ただ生きるための努力をします。
自然と一緒に仕事をするオーガニックガーデナーが出来ることは 、 単純に薬をまいて虫や菌を殺すことではなく、植物自身が体力をつけ、虫や病気に耐えられるよう土や環境を整えて、 見守ること。真夏には虫も病気も一休み。人と同じで暑すぎるのは苦手です。この環境に耐えられる植物を選ぶのもガーデナーの大切な仕事のひとつ。
自然環境に負荷をかけず、植物も虫も人もお互い様の気持ちで共存できる社会になることを願っています。
フローラルガーデンよさみ
チーフガーデナー
近藤かおり